真樹日佐夫、大いに語る

5月8日、東京・後楽園ホールで開催されるキックガッツ。大会を直前に控え、主催者である真樹日佐夫が大会展望、東日本大震災、そして自らの健康法などをあますところなく語った(聞き手◎布施鋼治)。


──今回の大会は東日本大震災チャリティー大会として行なうことになりました。
真樹 まずは今回の震災で亡くなられた方々にお悔やみを、被災された方々にお見舞いを申し上げたい。キックガッツだけではなく、今年の格闘技イベントのテーマは全部震災チャリティーってことになるんじゃないのか。
──東日本大震災が発生した時、先生はどこにいたんですか?
真樹 あの時、俺は上野の行きつけの店で昼酒を飲み始めた矢先だった。そば屋の出前持ちがひっくり返ってさ。だけど、ちょっと俺たちが(関東で)体感した地震にしちゃ、被災度は大きかったよな。九段会館で天井が落下した事件なんて信じられないよ。
──あの事件で2名も死亡しましたからね。
真樹 船酔いと同じで左右の揺れだと人間は合わせられる。でも、上下に揺れるとどうしようもない。人間は縦揺れに一番弱いからね。
──東北地方の変わり果てた風景は戦後の東京の風景と重なり合いました?
真樹 俺は終戦の時、5歳だったからな。俺の頭の中では東京大空襲は最初は下町がやられて、次は山の手という感じで一通り覚えている。でも、今回の方がさらに絶望的だよね。
──被災した方々に軽々しく元気を出してとはいえない空気を感じてしまいます。
真樹 ビックリしたのは、海の歌を自粛してしまったんだろ。子供たちが海は怖いという理由でさ。海は広いな大きいなという歌も歌えないというんだよ。昔、寺田寅彦が「天災は忘れた頃にやってくる」と警鐘を鳴らしたけど、本当に忘れるということは油断だよね。
──世間では自粛や節電ムードが広がっています。
真樹 みんな節電しているよね。俺なんかも(震災直後は)寒かったけど、暖房だけはとりあえず止めようと思ったよ。でも、テレビなんてどこもかしこも報道番組だったじゃないか。面白くもなんともない。報道する局はふたつくらいに絞ってさ、娯楽は娯楽でやらないと。やたら自粛を唱えるのはおかしい。東北地方が被災したからといって、他の地方の人まで右へならえで静かにしている必要はないだろう。そんなことをしていたら、復興が遅れてしまうよ。
──そうですね。
真樹 毎回そうだけど、試合としては前回の大会を上回るというのがテーマだな。「代表作は何ですか?」と訊かれた作家が「次回作」と答えるのと同じだ。今回の震災を逆手に取ってうまくモチベーションを上げて、火事場の馬鹿力を出す。そういうふうに闘えたら、被災者にとっても大きな励みになるだろ?
──今大会に出場するキックボクサーで期待している選手は誰?
真樹 イチオシはメインイベントに出る沖縄のRIOTだよ。弟子の弟子だからな。ただ、勝ち負けは相手があってのことだし、ラッキーパンチが当たることもあれば、ラッキーキックが当たることもある。問題は勝ち方、負け方だな。
──具体的にいいますと?
真樹 仮に負けるにしても、嵐のような声援を浴びるような負け方をしてほしい。現に負けても、人気が落ちない選手はたくさんいるじゃないか。そういう選手は負け方がカッコいいんだよ。勝つ時にはKOで、負ける時もまたアッサリと大の字になる。それが勝負の醍醐味。一方的にイジめられるだけみたいな負け方をするなら、最初から出てこない方がいい。
※この続きのインタビューは8日会場で発売される大会パンフレットでお楽しみください。
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